ダダ父通信(2) 視覚優位 pdf 
 自閉症児は言葉をうまく使えませんし、文脈にそって理解することが苦手です。音声を言葉として受け取り、連続して処理するのがむつかしいのです。しかし、視覚的な情報に対してはよく反応し、ときには驚くべき記憶力を示したりします。
 言語や概念を処理する左脳の働きがわるいのに対して、画像やイメージなどを処理する右脳が発達しているのです。私たちは本来、左脳と右脳の働きを連関させて物事を認識しますが、社会経験を積むにしたがって左脳を多く働かせるようになります。発想の転換をはかるための右脳開発などが言われたりするのはそのせいです(安直なトンデモ本がほとんどですが)。
 自閉症児は最初から右脳人間なのだと考えるとわかりやすいことが多いです。

裏返しのパズル
 
 ダダは小さいときからパズルが好きでした。よく乗物や地図のジグソーパズルをしていましたが、ある日ふと見ると、日本地図のパズルを裏返しでやっているのです。それもすごく早い。私たちはこれがほんとの裏日本やあ〜と思いました(^_^)
  その後、さまざまな報告で自閉症児には裏返しのパズルの得意な子どもが多いことを知りました。
 これは何を示しているのかというと、他の情報に比較して形そのものを認知する能力の高さを示しているのです。私たちは普通ジグソーパズルをするとき絵柄や色を手がかりにしますが、自閉症児は主として切り抜かれた形の微妙な違いによってやっているのです。
 
国旗・マーク・ロゴ
 
 やはり小さいときに国旗やマークに興味を示したので、絵本やカードを買ってきていっしょによく遊びました。ほとんどしゃべらない時期に、国旗を見てフランス、ブルンジ、キリバス、アンティグア・バーブータなどと言っているわけですから、天才国旗少年も真っ青です。電車のドアのマークを見て「ユビツメチュウイ」などと言います。自閉症児はよく商品のロゴマークなどにもつよい興味を示します。
 国旗、マーク、ロゴなどに共通するのは、単純化されたわかりやすいデザインです。
 自閉症児に絵カードで指し示すことが効果的なのは、この視覚的な特性を活用しているからです。
 
やってはいけないことを×で示す
 
 水の好きな自閉症児も多いです。時ならぬ時に蛇口をひねり、遊ぶので困ってしまいます。口でいくら叱っても、あまり効果がありません。一時はおさまっても、また同じことが繰り返されます。こんなとき、蛇口の上に「さわりません」という文字と赤い大きな「×」のカードを貼っておくと効果的でした。
 禁止の「×」はあまり多用すべきものではありませんが、口で「ダメ」と叱り続けるよりはずっとよいことです。ダダの場合はカードを指でさすと「さわりません」と自分で読んで納得します。
 水遊びなどの感覚遊びについては、今回とはまた別のお話になりますが、ダダの場合は水遊びを「お米とぎ」や「洗濯」といったお手伝いにもっていきました。今では実に楽しそうにお米をといだり、洗濯したりします。お手伝いはすごくほめてもらえるので達成感もあるようですね。
 
「お尻を出さないでおしっこする」ことを教えるには?
 
 小さい頃はズボンもパンツも下ろしておしっこをしてもよいでしょうが、大きくなってもそれをしていると問題ですね。
 これは「恥ずかしいからやめましょう」と言ってもわかりません。「恥ずかしい」というのは他者の目を意識する社会的な感覚ですから、なぜ「恥ずかしい」のかわかりにくいのです。
 こういう場合は、「お尻を出しておしっこをする」絵に「×」を、「お尻を出さずにおしっこをする」絵に「○」を書いて示してあげるのがよいでしょう。(これはまだできていない課題です。やりやすいズボンやパンツを用意すること、手順をわかりやすく示すことなど具体的な課題分析についてはまたお知らせします。いずれ家と学校で同時に取り組んでみましょう)
 よい行動を視覚的に具体的に示し、それができたらほめてあげることが大切です。
 
文字は視覚言語
 
 文字は視覚言語ですから、音声言語よりもずっと伝わりやすいです。
 家の絵カードには必ず文字をつけています。
 ダダに就学前から文字を教えてきたのは、そのためです。音声はその場で消えてしまいますが、文字は何度も視覚的に確認できるので安心感があるようです。
 
●視覚優位であることを活用した取り組みの大切さ
 
 こうした視覚優位を利用した取り組みの工夫は、絵カードばかりでなくたくさんあります。持ち物やクツの置き場所の指示や、次回に書きますが「スケジュールボード」なども時間の流れを視覚化しているわけです。
 視覚優位であることを活用した取り組みは、私たちの指示を伝えるのに効果的だから重要なのではありません。子どもにとってわかりやすい、自分で判断するための手がかりであることが重要なのです。
<余談>
 学校でもみなさんに読んでいただいているようで、ちょっとプレッシャーを感じています。ある席で先生のお一人が「ダダくんを見てるとなんだか人間の基本の部分を考えさせられますね」とおっしゃいました。そうです。社会性というオリを取り払ったニンゲンの純粋なかたちを見る思いがします。その純粋な彼に、このおかしな社会とのコンタクトの方法を教えるわけですから、できるだけわかりやすい形で提示してあげたいですね。
 
 「ダダ父通信」はあくまでもダダを念頭においたものです。お子さんの年齢や認知レベルによって具体的な取り組みは違うと思うので、お使いになられるときはお子さんにあわせて工夫してください。
 なお、具体例はもとより考え方の根幹の部分はダダ母の意見に多くをおっています。
 
 視覚優位 1999.5. bxr01340@nifty.ne.jp ダダ父 
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