ダダ父通信(3) 見通しを立てる  pdf 
 自閉症児は、時間の概念を把握することが苦手です。なんとなく流れていく時間の感じをうまくつかむことができません。
 「未来は希望に満ちている」のは本当かもしれませんが、何が起こるかわからないという点では「未来は不安に満ちている」ことも事実です。
 私たちは日常生活の中でたいがいのことをシミュレーションしながら生きています。はじめてのことでも、すでに体験したことを手がかりにして、予測しながら行動します。そして、その予測の中には、思い通りにことが運ばないかもしれないということも含まれます。自閉症児は未来の予測がうまくできません。概念的なとらえ方が苦手なので、社会的な因果関係(原因と結果の関係)を理解しにくいのです。うまくいくこともあればうまくいかないこともあるということを、やんわりと理解することができません。
 だから、自閉症児は同じことを同じパターンでやりたがります。何が起こるかわかっていることをやることは彼らにとって一番安心感があるからでしょう。

予定を伝える
 
 車に乗ってお出かけした幼児期のこと。スーパー「さ○う」の前を通り過ぎていくと、ダダはそれだけでかんしゃくを起こしました。もっと楽しい「○○公園」に行くのだといくら説明してもダメです。そのままエビぞりになって泣くばかり。代弁すると「この道を通れば、さ○うに行くはずじゃないか、なんで行かないのだ」というところでしょうか。
 で、「さ○う」や「○○公園」の絵カードを作りました。それを使って、これから行くところを前もって伝えるようにしました。するとかんしゃくはしだいになくなっていき、病院など苦手な場所でも納得が早くなりました。
 どこで、なにをするのかということを前もってなるべく具体的にそして視覚的に伝えることは、彼らの不安を取り去るのにとても重要なことです。
 
スケジュールボード
 
 1日の予定を前もって伝えるのには、スケジュールボードが有効です。ダダ家では、安くて軽い小型のホワイトボードを使っています。
 たとえば、ボードに「1 あるいてがっこうにいく」「2 がっこう」「3 あるいていえにかえる」と書いて、朝見せます。参観日や各種の検査など、いつもとちがうことがあるときにはそれも書いて念入りに説明します。文字で伝わりにくい場合は絵やシンボルを用いてもよいでしょう。あくまでも子どもに予定を伝えることが目的ですから、その子どもに伝わりやすい方法を用いればよいのです。
 学校では「1 あさのかい」「2 こくご」「3 たいく」…などと書いて、見せます。すでに学校でしていただいていますが、「2 こくご」の下に「○○先生と「う」をならいます」などと書くと、より具体的でわかりやすいです。
 スケジュールボードは、活動項目を並べることによって時間の流れを視覚化しています。時間の視覚化は時計やカレンダーも同じですが、ボードは具体的な事柄と手順を、個別に視覚的に伝えることができるのです。
 
見通しを立てる
 
 学校で活用されている時間割とチャイムは、基本的にはスケジュールを伝える役割を果たしています。それをさらに見通しを立てやすいように具体的に示す手だてとしてボードが有効なのです。
 課題でも遊びでも、その終わりを前もって伝えておくことが大切です。私たちもその活動がいつ終わるのかがわからないと不安になったりします。講演を聴いていて2時間を過ぎても終わらないとそわそわしたりしますね。時計を読めない場合でも、ボードを使うと活動の終わりを次の活動に移ることによって理解できるのです。
 スケジュールボードは私たちの手帳のような役割だと考えていただくとわかりやすいと思います。今日は、職場に行って、帰りにあれを買って、帰ってからこれをする。あっと、今日は神巨戦だから、買い物を早めにしなくちゃ、といったことをメモっておく。一日の見通しを立てるわけです。見通しが立つと安定して活動にとりくめます。
 予定を変更するときは、手帳でするように、斜線を引いて次の活動を書いて確認するのがよいでしょう。
 
命令ボードでもなく、要求ボードでもなく
 
 スケジュールボードは単なる命令ボードではありません。重要なのは、本人が納得して、より「自律」的な活動をしていくための手がかりになることです。声かけでできていても、声かけをする人がいないときにはどうすればよいのでしょう。つまり、「自律」的にというのは、他者の指示がなくても活動できるということです。これはまた「選択」的に活動できることにもつながっていきます。この2点は将来の活動を豊かにしていくためにもっとも大切なことなのです。
 スケジュールボードに慣れたダダは、活動項目の間に自分で「のりものビデオ」などとかってに書き込むようになりました。それをたくさん書き込んだりすると「要求ボード」ですね。こんなときは長四角の枠を作り、一つだけ書いてよいことにします。これは課題を達成したときのご褒美にもなります。子育てや教育はいつも、発達をみきわめながらのかけひきだと思います。
 
気むづかしい外タレのマネージャー
 
 ダダと関わる私たちは、たとえばすごく気むづかしい外国人タレントのマネージャーをしている感じでしょうか。でもその気むづかしさは、ステージにかける気持ちのあらわれで、ほんとはいいやつなのです。急な予定の変更は御法度ですが、ちゃんと理解できれば快く従ってくれます。最初は予定の変更をたどたどしい外国語で説明していましたが、そうだボードに書いて示せばよいのではと思い、やって見ると、なんだかうまく伝わるではありませんか。でもいい気になって、いいかげんな予定を立ててダブルブッキングしたり、変更ばかりしていると、また機嫌が悪くなりました(^^;)
 見通しを立てる 1999.5. bxr01340@nifty.ne.jp ダダ父 
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