| ダダ父通信 | 父親からのお願い |
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ダダは自閉症という困難な障害を背負っています。自閉症は脳の生得的な障害ですから治りません。コミュニケーションの困難さは生涯続いていきますが、しかし、適切な取り組みによってその困難さは改善されていきます。 私たちはそれをできるだけ援助していきたいと思っています。先生方にもご理解たまわりたいと思います。 |
- ●自閉症について知っていただきたい
- その子どものハンディがどのようなものなのかをよく知らなければ、的確な教育、適切な援助の仕方はわかならい。これは自閉症児と6年間付き合ってきた親の確信です。
- たとえば、身体上のハンディがある場合には、見た目でわかるので私たちもそのハンディのあり方を想像しやすいでしょう。具体的に追体験してみることもできます。それに対して脳機能のハンディの場合は、想像しにくいし、追体験も困難です。「自閉症」の場合は、とくにわかりにくい面が多いと思います。
- しかし、最近になって高機能の自閉症者の自伝がいくつか出版され、彼らがこの世界をどのように感じ、どのように考えているのかを知ることができるようになりました。そして、療育や援助に関する有効な実践例が世界各地で報告されるようになりました。これらはみな「自閉症」の特性をよく知る ことによって達成されたことです。1990年代以降の文献には、幼児期の早期療育、学校教育、就労支援などでめざましい報告がたくさんあります。
- 私たちは親としてそれを学んでいきたいと思っています。そして先生方にも「自閉症」という障害についてよく知っていただきたいと思います。
- ●閉じてる心を開く?
- 「自閉症」は、「情緒」に「障害」があるわけではありません。自閉症は自ら心を閉じる病気ではありませんし、育て方や家庭環境によって生じる心の病でもありません。だから、療育・教育において「閉じている心」を「開こう」とすることは勘違い以外の何ものでもありません。
- しかし、自閉症児は外の世界からの情報の入力と処理に生得的な問題をかかえているわけですから、私たちが通常の方法でコミュニケーションを取ることが難しいのは確かです。また、彼ら自身も他者とのコミュニケーションが取りにくい(相手の言っていることがよくわからない、言いたいことをうまく伝えられない)ことから、しばしば不適切な行動をしてしまいます。そしてその原因の多くは、本人にあるのではなく、自閉症児・者に関わる私たちの側にあるのです。
- たとえば、幼児期に言葉がでないことが心配だと相談すると、「もっと言葉かけをしなさい」と言われることがよくあるのですが、これはとんでもない間違いです。言葉が伝わりにくい自閉症児に過剰な言葉かけをし続けるとますます混乱してしまいます。
- 私たちが言葉も文字もまったくわからない異国に一人で行った場合を考えてみてください。そこで突然大男にまくしたれられたらどんな気持ちがするでしょう。子どもにとって私たち大人はみんな大男、大女だったりするのです。
- だから、親や療育者(教育者)にとって重要なのは次の2点です。
- 1. できるだけわかりやすい伝え方を工夫する。
- 自閉症児のほとんどは視覚優位です。言葉はなるべくおさえて短く明瞭に発し、視覚的にわかりやすく伝える工夫が必要です。カードやスケジュール・ボードが有効なのは、それが視覚優位という自閉症児の性質に基づく工夫だからです。
- 絵カードなどを使うと言葉の訓練にならない、せっかく出ていた言葉が少なくなる、という方がいますが、これまでの報告ではそういったことはまったくありません。視覚的な手がかりは自閉症児が安心してコミュニケーションを取るための重要な支えになります。カードの使用によって逆に機能的な言葉がふえたという報告はたくさんあります。
- 2. コミュニケーションの力を発達させるために努力する。
- 私たちが教科学習を大切にしたいと思っているのは、いわゆるお勉強ができるようになることを目的にしているからではありません。認知能力を高めることによって、コミュニケーションの力を発達させることができるからです。それはこれまでの経験からはっきりと言うことができます。幼児期にはマッチングなどを通して色や形を理解していくに従ってパニックが減っていきました。混沌としていた世界がしだいにダダの中で整理されていくのがよくわかりました。
- 私たちは比較的熱心に自閉症と取り組んでいるのでよく誤解されますが、家での課題学習に膨大な時間をかけているわけではありません。1日15〜20分くらい、書字と算数のプリントをやるだけです。これは学習の内容そのものよりも、机に向かって課題をやるという学校教育で普遍的な習慣を作るためでした。
- あとは発達段階に応じてさまざまな運動や遊びを工夫してきました。お絵かき、工作、ケーキづくり、登山、水泳、スケートなんでもやらせてみるようにしてきました。これは経験によってダダの世界を広げていくためです。
- 読み書きを初めとする教科学習と、遊びやお手伝いを通したさまざまな経験は、発達のための車の両輪だと考えています。
- ●子ども一人一人にとって今何が必要なのかを考える
- 「個別指導計画」とは、一人の子どもの個別な発達状態を関わる人がみんなで確認し、みんなで療育の方向を考えていくことです。
- 自閉症児は同じ種類のハンディを負っていますから、その行動によく似た傾向があるのですが、自閉傾向は発達段階によってそれぞれ異なった現れ方をします。また、子ども一人一人の本来の個性の部分も当然違います。
- 「個別指導計画」は最近になって文部省が新指導要領の中で提唱していることですが、もともとの発想はアメリカの「個別教育計画(IEP)」に学びながら、それを日本の学校現場に適した形に整えたものです。
- IEPは取り出し授業を多くしようなどということではありません。IEPの意義は次の点にあります。
- 1. その子どもに関する情報を、その子どもに関わる人々が共有する。
- まず、これまでの発達がどうであったかを事項別に確認し、いまどのような発達段階であるかをみんなで確認します。これによって親も、親学級の先生も、特学の先生もともに考えていく土台が作られます。
- 就学前の情報は、主として親が提示することになりますが、場合によって保育所・幼稚園あるいは各種の医療・療育機関から情報を提示してもらうのもよいでしょう。
- 2. 共有した情報をもとに、関わる人々が協力して発達をうながす。
- 最初に共有した情報(たとえば就学までの生育歴)は、その子どもの現在の発達のベースラインを示しています。そのベースラインからどのように発達をうながしていくか、また何が最優先課題かをみんなで話し合って決めます。これはここまでできているから次はここまでやってみようか、それについてはこんな工夫があるから家でもやってみればよいのでは、という感じです。ゴール(短期目標・長期目標)を具体的に設定するわけです。
- これを学期ごとに振り返って、修正していくわけです。
- これによって、家でも学校でも同じ目的をもって同じ方法で関わり、発達をうながすことができます。
- 自閉症児の場合、家ではできるが学校ではできないこと、逆に学校ではできるが家ではできないことがよくあります。IEPはこうした問題の原因を探り、取り組みを調整するのにも役立ちます。
- 3. 記録を残す。
- 記録を残すことには大切な意味があります。
- 発達の経過をいつでも、そしてだれもが振り返ることができるようになるのです。つまり、その子どもの発達の経過に関する情報をひきつぐことができるということです。これは、先生が事情によって代わっても次の先生がその子どものことを短期間で把握するための重要な手がかりとなります。
- 親が、そして何よりも子どもが困惑してしまうのは、先生が代わるたびに別の取り組みをしてしまうことです。自閉症児は、環境の変化にとても弱いところがあります。人が変わっても同じ接し方をしていただければ混乱を少なくすることができます。
- こう書いてくるとたいそうなようですが、チェック項目をわかりやすく示すフォーマットを作っておけば記入は簡単です。先生にとっても親にとっても便利な手がかりになります。
- また、何もかもいっぺんに取り組む必要はありません。目標に優先順位をつけて、上から試みていけばよいのです。「生活面の目標」「学習面の目標」にはそれぞれ上から順に発達に応じた取り組みを示しておきました。
- たとえば、生活の短期目標として「トイレに行ったあとで手を洗う」ということを、学習の短期目標として「ちゃんとした書き順でひらがなを書く」ということをあげ、この2週間、家でも学校でも取り組んでみよう、という感じです。
- 身近で具体的な目標を決めてみんなで努力すると、先生も親もそして子ども本人が達成感を味わうことができます。それが次の目標に向かう糧となります。
- ぜひIEPをいっしょにやってみましょう。よろしくお願いします。
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