ダダ母出張興行録 自閉症の療育体制についての一考察 
 就学前に、ダダが受けた健診や発達相談などの結果を集めたことがあります。  それを元にして、また知り合いの親御さんからもアンケートを採り、意見をまとめ、乳児から学童期までの療育体制についての一考察を作ってみました。(2001,03)

 以降、近隣の各市町村の保健所にいって、保健師、心理士、保育士のみなさんにお話するときに、お渡ししているレジュメです。また、県の障害福祉課にも、参考資料として、提出しています。



1.一歳半健診の頃
【子どもの特徴】
言葉の遅れ。指さししない。マイペースでモノを相手に遊ぶ。または、まったく遊べない。人に関心がない。自分の要求のために大人を道具として使う(クレーン現象)。多動。新しい場所でのパニック。感覚的なこだわり(斜めから見る、臭いをかぐ、特定の音に過剰に反応する。廻る、跳ねる、手を振るなどの常同行動)。運動機能の遅れ(初歩が遅いなど)。
 
【親の想い】
少し発達が遅いようだ。育て方が悪かったのか?ちょっと変わった子だ。子どもの個性の範囲なのか? 障害があるかも、と感じている親御さんは少ない。また、感じていても、それを自分から表現したくないという気持ちも強い。
 
【援助者の対応とフォローの体制】
明らかに、自閉症の特徴がたくさん見られる場合は、そういう可能性もあるということを示唆する必要がある。また、まだ疑問であるという場合は、自閉症の幼児への対応が、どんな子育てにも有効であるという意味で、その対応法を一つの手段として教えることができる。(資料…『レイルマン』ダダ母たより・療育資料編1 参照) 心配なことや、疑問に思うことは、いつでも相談できるという安心感をもってもらう。 特に一歳半から、二歳代は変化の大きいときで、心配されていたことが飛躍的に改善されることもあるということを、念頭において対応する。
 

2.三歳児健診まで
【子どもの特徴】
言葉の遅れ。かんしゃく(パニック)。多動。特定のモノへのこだわり。偏食、異食。睡眠障害。運動機能の遅れ(不器用、遊具を使って遊べないなど)。
自閉症の幼児期の特徴がたくさん表れてくる時期。
 
【親の想い】
なにか変?と思いながら、否定する気持ちが強い。けれども、「どうして変なのか?」知りたい気持ちも生まれてくる。度を超した偏食や睡眠障害、かんしゃくなど、通常のしつけでは考えられないことが、子どもの症状として出てくると、その理由がわからないため、しかったり、罰したり、たたいたりしたネガティヴな子育てをしてしまいがち。また、パニックをおさめるための、過剰な甘やかし(お菓子を食べ放題、好きなことだけをくり返させる)などによって、子どもに新たなハンディ(二次障害)をつけさせることもある。なんとかしたい!普通に育って欲しいけど!という気持ちが一番強いが、毎日の生活で精一杯の時期。
 
【援助者の役割とフォローの体制】
一歳半健診や発達相談などで、気になるお子さんには、定期的に相談する日を持ったり、家庭を訪問したりして、様子を観察する。親御さんが否定的であっても、真摯な態度で事実(お子さんの状態)を伝えることは、結果的にお子さんに良い環境を作ることができる。また、個別な観察が必要と思われる場合、親子遊びなど集団観察をするサークルを紹介する。
その中で、自分の子どもだけではないということや、他の子どもとの違いを感じてもらう。不安や心配事については、全体の時よりも、個別な時間をとって、具体的なアドバイスをし、一つ一つ考えてもらうようにする(まだ、人に知られたくないという気持ちが強いため)。常に親御さんがお子さんのことや親御さんの育て方について否定的にならないように、肯定的に生活してもらえるように心がける。 また、診断、判定などの希望があればすぐに紹介できるような体制をとる(親御さんにとって、この頃の時間はとても早く感じられるため) そのために、保健所、児相相談所、病院など同じスタンスの横の繋がりが必要不可欠。
 

3.三歳児健診の頃
【子どもの特徴】
言葉の遅れ。かんしゃく(パニック)。社会性の無さ(状況にあった行動ができない)。多動。特定のモノへのこだわり(記号に興味を持つ、電車や自動車、キャラクターに必要以上に強くひかれるなど)。身辺自立の遅れ。他傷、自傷。運動機能の遅れ(手や足の協応がうまくいかない)。
 
【親の想い】
いよいよ変だ!何らかの障害があることを告げられるかもしれないという不安の中にいる。けれども、その違いは「何か?」を具体的に聞きたい気持ちがとても強くなる。そして、たとえ告げられても、挫折的になることは少ない。なぜならそれまで子どもとの時間を充分持っているので、大変さを乗り越えたいという気持ちの方が強くなるから…。
 
【援助側の対応とフォローの体制】
三歳児健診では、お子さんの発達の遅れが顕著になってくるので、ハッキリとわかるお子さんには、「自閉症」の示唆をする。けれども、充分に受け容れる気持ちが整っていないと判断される場合、たとえ「自閉症」とはっきり言えなくても、その支援の仕方を伝えることが必要。自閉症児へのアプローチは、たとえそのお子さんが健常域に発育されることがあっても、生活を整える、コミニュケーションを育むという面で有効。「自閉傾向」という言葉(本当は使って欲しくありませんが…)を使っても、できるだけ「自閉症」と同じ方向性を持って対応することを知ってもらう。アドバイスは具体的に。それが難しい場合、ホームページや書物、その他の情報源を知らせる。できるだけ早くに療育の環境が整えられるように、情報は正確に伝える。言葉の教室や療育施設など、また、障害児枠での加配付き保育所の入所などを、実現していけそうなところを紹介する。
家庭での支援の仕方を伝え、疑問や不安には、個別に対応する。また集団でのアドバイスも少しずつ有効になってくるので、親同士の集まりなどを企画したり、紹介をする。
 

4.保育所、幼稚園、または通園施設の間に
【子どもの特徴】
言葉がない。コミニュケーションができない。かんしゃく(パニック、他害、自傷)。社会性の無さ(行事等の参加が困難など)。特定のモノへのこだわり。動き回る。身辺自立の遅れ。課題にのらない。
 
【親の想い】
他のお子さんとの違いをハッキリと意識する。そしてできれば就学を目標に、少しずつ改善していきたいと感じる。環境を整えれば集団生活の中でも発達が見える時期でもあり、家庭で取り組んでいこうという気持ちが強くなる。よりよい方法を知りたいと思い始める。また、就学までに…という気持ちが強いだけに、逆に「どうすればいいかわからない」という環境に置かれると、たたく、しかるなどのネガティブなしつけに陥ってしまいがち。子どもの反応が返ってくる時期であり、適切な対応ができれば、生活を楽しめるようになる。
 
【援助者の役割とフォローの体制】
明確に「自閉症」と障害名を伝える。「5才までに環境整備を」ということを念頭において対応する(自閉症児にとって早期療育は、「見てわかる生活」ができるように環境を整えるということが一番必要だから)。
「自分一人ではない」「他の家庭ではどんな風に暮らしているのか」ということを知ってもらうためにも、親の集まりを紹介する。取捨選択は、親御さんの判断ではあるが、学習会や療育の情報は、できるだけオープンに流す。
要求があれば、または心配なお子さんの場合は、発達相談を受け付ける。発達検査の内容を「何才レベル」という抽象的な説明で終わらずに、「何がニガテで、何が得意か」という具体的な内容を心がける。前向きに子育て(療育)を続けていってもらえるように、励ますことが基本。
保育所、幼稚園、療育施設での対応は、お子さんの成長に大きく左右するので、担当の保母、先生には、自閉症の障害特性を学んでもらう。また、親御さんの意見に耳を傾けてもらう。(資料…『レイルマン』ダダ母たより・療育資料編2 参照
 

5.小学校へ入学以後
【子どもの特徴】
コミニュケーションの障害。社会性の障害。変わった行動パターン(常同行動、こだわり、一定のルールを作るなど)。
 
【親の想い】
学校での適応はできるか、将来的にはどうなるのかという不安はいつもあるが、ほとんどの場合「自閉症」という障害を受け止めることが出来始める。一緒に生きていくということを具体的に考えはじめる時期。ただ、社会との接点が増えるため、別の問題も出てくるので悩みも多い。子どものために学びたい、また将来のために備えたいという気持ちになる。
 
【援助者の役割とフォローの体制】
普通学級、特殊学級、養護学校とどのような形で学校生活を送ることになっても、受け入れる学校、担当する先生方の「自閉症の障害特性」の理解は欠かせない。そういう知識や実践について学ぶ機会をもち、有効な知識を子どもに応用できるよう配慮する。自閉症児の場合、親御さんとともに、療育するという姿勢が大切。学校以外の相談機関は、いつでも不安や心配を気軽に話せ、ニーズにそった適切な検査を提供できる場所であるように。そして、親御さんの話される問題で、介入する必要があれば、迅速に具体的な対応をするということを心がける。
親の会や学習会、講演会、良識的な療育情報は、各施設(保健所、福祉センター、各学校など)と連係を取りオープンに人目に触れるようにすることも大切である(就学という一つの節目を迎えたことで、子どもが学校へ行き始めると、そういう情報が案外手に入らなくなる)。
 

 以上、20名ほどのお母さまからお話をお聞きして、一考察として書いてみました。
 あてはまらない場合も、お子さんの状態によっては診断がとても早い、逆に診断もされないで就学を迎えてしまうということもありますが、だいたいの平均的な流れだと思います。
 そして援助者の役割とフォローの体制は、親の希望として書いています。
 これからのお子さんへの対応に、少しでも参考にしていただければ幸いです。
 

<覚えておいてほしい言葉>

  1. 「視覚的」「具体的」「肯定的」な対応を心がけましょう。
  2. 「言って聞かせる」から、「見せて伝える」へ。
  3. 困ったら「自閉症の障害特性」に立ち返りましょう。 
 自閉症の療育体制についての一考察 ダダ母 
ダダ母出張興行録「わが家の光くん−ダダ家のお話−」に戻る
「目次」に戻る